一冊の本。ONE BOOK STORE。

考え方が変わった。旅にでた。助かった。私を変えた。それは、たった1冊の本。

見た目かっこよくないし人付き合いも得意じゃないけど行動力あってブレなくて結局リア充の西嶋がかっこいい「砂漠」

 私は作品をカテゴリー分けは特にしないようしています。というか出来ないんです。ブクログで読んだ本や積読の管理をしているんですが、ハウツー物とか推理物とかカテゴリー分けしやすいものは良いとして、そうでないものが割と多い。カテゴリー分けというより、ミステリー物だし、タイムトラベル物だし、純愛物で、それでいて警察物みたいにタグ付けの方がいいような気がします。読んだその時の心境によって受ける印象も違いますしね。

 あと、植え付けられてしまった作家カテゴリというのもややこしいです。ミステリー作家、という呼び方も大方周りの人が作っているものですよね。最初にとった賞のカテゴリなんかでも区別されますね。ご本人が「どもミステリー作家の◯◯です」とも言わないのではないでしょうかね。百田尚樹さんの場合は出身が放送作家ですから、読み手は偏見もなく読めますけど、綾辻行人さんの作品だと読み手は明らかに「今から推理小説を読みます」というマインドセットしてしまうので、推理トリックの部分に意識がいってしまって、実は登場人物がいいこと言ってたりするのを見逃したりしてしまうんですよね。伊坂幸太郎さんの作品も登場人物とその言葉が際立ちます。この作品もそう。

 登場する「西嶋」がとにかくかっこいい。最も好きなのはこの台詞です。

あのね、目の前の人間を救えない人が、もっとでかいことで助けられるわけないじゃないですか。歴史なんて糞食らえですよ。目の前の危機を救えばいいじゃないですか。今、目の前で泣いてる人を救えない人間がね、明日、世界を救えるわけがないんですよ。

かっこいいんです。私はこの一言で、世の中のためになる事を語る人間よりも、目の前の課題を黙々とこなす人間になりたい、そう思えました。宮本輝さんは「避暑地の猫 (講談社文庫)」で、人間というのはたったひとことで変わるおぼつかない生き物だと言ってます。本当に一つの言葉が読者を変えます。その一言に会いたくて、今日も頁をめくるんですよね。

 もう一つ、「砂漠」の最後の方で校長先生が「人間にとって最大の贅沢とは、人間関係における贅沢である」とサン=テグジュペリが「人間の土地 (新潮文庫)」で言っている言葉を引用しています。そして、このあと私は「人間の土地」を読むことになります。こうやって作品から作品へと、もしくは作品から新たな趣味等につながっていくのも読書の魅力ですね。

 とにかく頭使わずにコメディでアクションムービー見たいという気持ちの時に読んでください!

砂漠 (新潮文庫)

砂漠 (新潮文庫)