一冊の本。ONE BOOK STORE。

考え方が変わった。旅にでた。助かった。私を変えた。それは、たった1冊の本。

根っからの理系人間だけど弁慶ってすごくいい奴だと思うし、巴御前に惚れてまう「君の名残を」

  私は歴史物がとても苦手だ。登場人物が多い上に名前が難しいし、同じような名前だから余計にこんがらがる。日本史の授業が苦手だったのもそういう理由からだ。しかし、歴史物は読みたい、そういう矛盾した気持ちも確かにあるのだ。日本人として、当たり前の知識として知っておきたい。だから、普通の歴史物と違ってミステリーもの、タイムトラベルもので、歴史物のこの本を知った時は嬉しかったのを覚えている。
  そう、私はタイムトラベルものに目がない。今最も好きなのは、ゲームとアニメで展開のシュタインズゲートだ。記憶を過去の自分に飛ばすことで未来を変える前半と、自らが過去に行って起こった事実を変えずに未来を変える事に挑む後半、人間としての苦悩も描きながら壮大かつ身近な世界を描いている。
  張りめぐらせる伏線と見事な回収で楽しませてくれるが、伏線と回収は、過去と未来である。過去に張られた伏線が未来に回収される。この君の名残をは作中で主人公たちが行った過去と残された人たちの現在の描写がなされてはいるが、この作中の過去に対する現在とは、我々が知っている日本史そのものとして考えられる。誰にも共通している現在、ウィキペディアでも確認できる現在。だから、作中では無理に文字での回収はしてないように思う。日本史をほとんど知らない理系人間の私にとって、作中の出来事がウィキペディアで確認できる日本史としてリアルに刻まれているのは感動を通り越して興奮である。
  巴御前と弁慶、そして北条義時をスポットに当てて平家物語ベースのストーリーが紡がれていく。歴史物嫌いの私に平家物語を好きにさせてくれた一冊。私のような人に、是非読んでいただきたい作品だ。

 

君の名残を (上) (宝島社文庫 (487))

君の名残を (上) (宝島社文庫 (487))

 

 

 

君の名残を (下) (宝島社文庫 (488))

君の名残を (下) (宝島社文庫 (488))